競輪の落車事故について。
軸で買った選手が転んでしまい、車券を破り捨てて「金返せ!」と叫びたくなるものです。ただ、今後はすぐに捨てないでください。なぜなら、落車でも車券返還されるケースがあるので。
詳細は少し複雑ですが、覚えておけば損しなくて済むことがあるかも。
そこで今回は、落車時のルールをはじめ、発生頻度や賞金に関する規定なども合わせて解説していこうと思います。
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競輪の落車とは?
まずは競輪の「落車」について、初心者が誤解しやすいルールもいくつか解説。
レース結果に関係するのでしっかりと理解しておくように!
そもそも落車とは?
辞書(大辞林)によると、落車とは「乗っていた二輪車から落ちること。主に自転車やオートバイの競技中の転倒のこと」と記されています。
落車というワードは競輪のみならず、ロードレースやオートレースなどでも使われている表現です。
競輪選手はシューズをペダルに固定させて走り、自転車にはブレーキが付いていません。その為、バランスを崩すと高確率で落車してしまうことに。
落車が発生する原因
競輪は“最高速度70km”のスピードに達する中、身体が触れ合うほど接近戦で競い合う競技。そうした特性から、落車の発生にはさまざまな原因があります。
最も多いのは選手間の競り合いによる落車。
- 過度な押圧や押し上げ
- ハウスと呼ばれるタイヤ同士の接触
- 真ん中の選手が挟まれる「あんこ」
いずれも他選手との絡みでコントロールを失い落車するケースです。
また、雨天時にはバンクにタイヤを取られるスリップ落車も少なくありません。さらに、斜行やふらつきなど、選手の不注意による落車も若手やガールズを中心に発生しています。
落車しても即失格にはならない
他の公営競技を例に挙げると、競艇の転覆、オートレースの落車は「発生した時点で失格」となります。しかし、競輪の場合、落車しても即失格とはなりません。
競輪の競技規則では、落車した選手が起き上がってレースに復帰する行為を禁じておらず、ゴールすれば完走が認められます(失格の場合を除く)。
ただし「ゴール前30mまでは自転車に乗る」ことが条件。30m線を超えたら自転車を押して、あるいは担いでゴールしてもOKです。
落車しても「選手が動けないほどのダメージを負ったり自転車が壊れたりしない限り、レースを続けても構わない」のが競輪特有のルールといえます。
落車した選手の競走結果には、以下のような表記が入ります。
落車棄権 (落棄) | 落車してそのままレースを棄権した場合 |
落再入 | 落車後、再乗してゴールした場合(完走) |
落担入 (落携入) | 落車後、ゴール前30m以内において自転車を携行してゴールした場合(完走) |
落滑入 | ゴール直前で落車し、そのまま惰性で滑り込んでゴール線を超えた場合(完走) |
公営競技では唯一無二の特殊ルールと言えるな
落車した選手が1着になった実例
信じられないような話ですが、過去には選手全員が落車して「誰が先に起き上がってゴールするかの勝負」となったレースも実際に起こっています。
以下は2022年12月2日、立川競輪で開催されたのF2レース。
最終バックで出走6選手全員が落車に巻き込まれるアクシデントが発生しました。
すぐさま起き上がって自転車に再乗した1番車の富永益生が1着でゴール。その後、長岡豪(6番車)・中川博文(3番車)も完走し、4番車の奥出良は壊れた車体を直しながらゴール前30m線までペダルを漕ぎ、そこから自転車を担いでゴール。
これらはルールに則った行為であり、もちろんレースは成立。着順もゴールした順番通り「1-6-3」で確定しています。
落車だけで失格とならない一番の理由は「落車した選手も車券に絡む可能性がある」から。
この後説明する「車券返還のルール」に関わってくる大事なポイント!
落車による車券返還のルール
競輪の落車はレースが終わっていないのに車券が紙クズになるアクシデント。結果オーライになるファンもいるでしょうが、大半は悲しく腹立たしい結末が待っています。
そんな中、落車した場所や状況によっては「お金が返ってくる」ことも。
レース中の落車は原則返還されない
大原則として、レース中の落車は車券返還の理由に該当しません。また、落車選手が棄権や失格となった場合、さらには他選手の妨害を受けて落車した場合も返還は行われず“レース確定”となります。
基本的に競艇の転覆が返還にならない理屈と同じ。競輪もただの落車は車券返還の対象外です。
落車で車券が返還されるケース
落車によって車券が返還される主なケースは以下の通り。
複数の落車棄権や失格で車券が成立しなかった場合
棄権や失格の選手が多数出る落車事故があります。言い換えれば「完走選手が少ない場合」となり、その人数次第で車券返還となる可能性が浮上します。
完走が0~1人なら全ての賭式が不成立(全返還)。完走が2~3人の場合でも一部の賭式で車券の返還が行われます。
スタート後25m線までの落車で欠場が出た場合
スタート後に選手が発走機を離れた後、25m線を通過するまでに選手が落車した場合は一旦レースが止められます。
落車した選手の身体が問題なければ再発走に。しかし、負傷などで出走不可だった場合にはレース不成立となり、車券は全て返還されるルールです。
競輪はラインで戦う競技。車券発売後に1人でも欠場選手が出るとレース展開に大きな影響を与えてしまうため、予想を一から考え直さねばならず、すでに車券を購入した人には不利益が生じます。
これにより「公正安全な競走」が実施できなくなることで、レースそのものを取り止める判断が下されるのです。
以下は、2022年4月21日の高知開催。
スタート直後、高橋佑輔(5番車)が他の選手と接触して落車し、負傷により再発走することができず。欠場扱いとなったことでレースは中止(不成立)となりました。
先頭誘導員が選手を落車させた場合
3つ目はかなりレアケースですが、先頭誘導員の過失によって選手を落車させてしまった時。
被害を受けた選手に非はないため、この場合もレース不成立で車券は全て返還されます。
先頭誘導員の退避基準が曖昧だった一昔前、選手と並走する時間が長かったことから落車することは稀に起こっていました。
そうした事態を受け、2019年に先頭誘導員と選手の接触をなくす競技規則に改正。この規定となって以降、車券返還に繋がる事故はほぼ起こっていないはずです。
落車で払戻金が変わるケースは?
先ほども書いた通り、競輪のレース中に起きた落車は返還の理由になりません。車券が返還されるのは、原則として「不成立となった場合のみ」です。
競艇のフライング返還欠場や、競馬のスタート前の発走除外では、締め切り後であってもオッズは変わります。
しかし、競輪では落車選手に関係する車券だけが返還されることはなく、確定後の払戻金(オッズ)が変わることはありません。
ゴール後に落車したらどうなる?
競輪は最後の直線での攻防が非常に激しくなるため、ゴール後に落車が起きることはよくあります。では、この場合の扱いはどうなるのか?
原則「ゴール線を通過した順のまま」となりますが、落車理由がゴール前での接触や過失走行にあると判断された場合、原因を作った選手が失格となって着順が変更される可能性も考えられます。
以下は、2024年高松宮記念杯競輪の決勝戦において、元Jリーガー「北井祐季(119期)」がG1初優勝を達成したレース。
ゴール手前で古性優作に後輪を絡まれてバランスを崩し、ゴール直後に落車してしまいます。
ただ、落車前に先頭でゴール線を通過していたので、北井の1着が認められるかたちでレース確定。北井本人大きな怪我なく表彰式に参加できました。
レース前の選手紹介で落車したら?
雨でバンクが滑りやすい時など「選手紹介中の落車」もごく稀に起こります。
この落車で選手の身体および自転車に故障が出てレースに出られなくなった場合、出走表の通りにレースが行えなくなることから中止(全返還)の措置が取られます。
最近の発生事例は2023年3月25日のいわき平競輪9レース。
雨天の選手紹介中に「高橋幸司(5番車)」がスリップして落車。さらに、そこへ泉文人(1番車)が乗り上げてしまい落車。
2選手ともに欠場となったためレースは中止。
3月25日のいわき平競輪(初日)9レースは、選手紹介中の落車の影響によりレースを公正安全に実施することが困難であると判断されたため、中止となりました。(中略)なお、第9レースの車券は全て返還となります。
発売されていた全ての車券は全返還に。
落車した選手の賞金
競輪は落車しても即失格ではありません。ただし、その後の結果によって賞金の仕組みは異なるので、代表的なケースをいくつか解説しておきます。
落車後に再乗してゴールした場合
落車後、自転車に乗り直して違反なくゴールすれば、通常の完走と同じ扱いとなり、賞金も着順に応じた額をもらうことができます。
前述の通り、落車は即失格の事案に該当しません。起き上がって再乗した時点でレースに復帰したとみなされるうえ、ゴールすると成績も有効となります。
落車後に棄権した場合
落車した選手が再乗できずにレースを棄権した場合、支払われる賞金は「末着賞金の80%」と規則で決められています。
末着は「レースに出走したメンバー中の最下位」となるので、仮に7車立てなら「7着賞金の80%」に。また、複数の選手が棄権した場合でも、賞金は全員末着の80%です。
失格となった場合
落車した選手本人が走行中の違反を取られて失格になるケースもよくあります。失格となればもちろん賞金はゼロ。
押圧や斜行など落車の原因を作ったと判定された場合、再乗してゴールしたとしても完走は認められず失格。着順賞金はなく、支払われるのは手当のみとなります。
落車選手には見舞金などが支給される
競輪選手のブログなどにもよく書かれていますが、レースで落車した選手には共済会から見舞金(落車棄権手当)が支給されます。
また、落車により怪我した場合は手術代や治療費を一部負担してくれ、長期離脱となった場合には、現在の級班が維持される「公傷制度」が設けられています。
しかし、自身が失格となった落車事故に関しては、公傷が認められないルールとなっているようです。
競輪における落車の発生確率
実際に「競輪で落車が起きる確率」はどの程度なのか?独自にデータを取って検証してみました。
落車の発生確率は大よそ5%前後
開催場 | レース数 | 落車数 |
---|---|---|
取手 | 36レース | 1回 |
西武園 | 12レース | 0回 |
立川 | 36レース | 0回 |
静岡 | 33レース | 1回 |
名古屋 | 17レース | 0回 |
岐阜 | 34レース | 1回 |
豊橋 | 12レース | 0回 |
松坂 | 36レース | 2回 |
奈良 | 27レース | 1回 |
岸和田 | 12レース | 1回 |
玉野 | 18レース | 0回 |
高知 | 26レース | 2回 |
松山 | 12レース | 1回 |
小倉 | 36レース | 2回 |
久留米 | 27レース | 1回 |
武雄 | 24レース | 1回 |
別府 | 14レース | 1回 |
2024年末に開催された17場計412レースにおいて、競走中の落車事故が起きたレース数を調べました(落滑入なども含む)。
全412レース中、落車が起きたレースは15件で発生確率は3.64%。
「大よそ30レースに1レースの割合で落車が起きている」こととなり、年間の総レース数(約30000レース)で換算すれば1年間で約1000件という結果に。
しかしながら、上記データは調査数が少ないうえ、同時期のレースを対象としたもの。悪条件が重なると発生率は高くなると認識しておきましょう。
バンクが濡れた雨天レース
天候 | 落車発生率 |
---|---|
晴天 | 3.87% |
曇り | 3.92% |
雨天 | 5.12% |
雪 | 4.35% |
ご覧の通り、天候によって落車率は全く違った数値を示しています。
その理由は「バンクの状態が異なる」から。
晴天時は普段通りの走行性能を発揮できる一方、雨天時は滑りやすくスリップしやすくなります。さらに、速度が上がるほど視界も悪化するので、予期せぬ事態を回避しづらくなるのでしょう。
級班が上がるほど落車率高め
級班 | 落車発生率 |
---|---|
A級 | 3.25% |
S級 | 5.97% |
S級の落車率はA級より倍近く高く推移しています。
A級戦だと実力差に凹凸がある反面、S級戦に出場する選手は猛者の集まり。したがって、ギリギリを攻めるレースが多いことから事故率増加に繋がっているのかもしれません。
ルール改正後も「落車多すぎ」の声
事故点制度が導入された1995年以前、年間6800件の落車があったというデータもあり、当時との比較では激減したという見方もできます。
しかし、過度な接触や競り合いを減らすルール改正が行われた現在も、落車は一定の割合で発生している状況。
競輪界のレジェンド「中野浩一」氏は過去のインタビュー記事で「簡単に落車する選手が多い」とコメント。技術が未熟なのに加えて「相手の動きを見ないで走る選手が多い」と話していました。
レース中の注意力・判断力の低下については、他の評論家や元選手からも指摘が上がっています。
もちろん、落車が起きるのはそれだけじゃないと思いますが、今後落車を減らすためにも改善すべき課題の1つと言えるでしょう。
落車は怪我や死亡事故の原因にもなる
競輪は硬いアスファルトのバンクを高速で走る競技。
本来であれば重装備で挑むべきですが、重たいプロテクターをしっかり装着する選手はごく僅か。その為、落車した場合にはある程度の怪我を覚悟しなければなりません。
打撲や擦過傷は日常茶飯事で、骨折などで長期離脱を強いられる選手。そして、頭部を強打して再起不能になったり、死亡事故となった例も多数発生しています。
命を懸けて戦う選手の気持ちは分かります。ただ、競輪ファンの一人として、二度と殉職者が出ないことを祈るばかりです。
これまで実際に起こった競輪の死亡事故については以下をご覧ください
まとめ
今回は競輪の落車レースについて、車券が返還されるケースの解説を中心にまとめました。
一部特殊な例外もありますが、落車レースはほぼ車券返還の対象外。とはいえ、落車まで考えて予想するのは難しいので、荒れそうなレースは大きく勝負しない冷静さが必要でしょう。
最後に、落車事故は死亡することもあります。運良く的中したとしても、声を大にして喜ばないように。
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