競輪界の総決算となる「KEIRINグランプリ」。最も強い9人のレーサーが集結し、年末に1度きりのレースで頂点を決める最高峰のレースです。
ここまではほぼ全ての競輪ファンがご存じでしょう。ただ、どうやったら出場できるのか?どんなルールで行われるのか?など、完全に理解している人は意外と少ないはず。
そこで今回は、最上位格付け“GP”に位置づけされるKERINグランプリについて、ありとあらゆる情報を詰め込んでおきます。
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KEIRINグランプリとは?
1985年に第1回大会が行われたKEIRINグランプリ。高額賞金にふさわしい位置づけや選考基準が設けられています。
その年の競輪界No.1を決める戦い
KEIRINグランプリとは、その年に活躍した上位9選手によって争われるグレードレース。格付けはG1より上に位置する「GP」です。
第1回大会の優勝者は競輪界の大スター中野浩一(35期・福岡)。その後、ファン増加と共に売上も上昇していき、第20回大会(2004年)には優勝賞金が1億円の大台に乗りました。
また、賞金の増額などによって世間の関心も高くなり、民放テレビ局だけでなくNHKでも毎年レース中継が行われています。
出場選手の選考基準
KEIRINグランプリの選考期間は「1月~11月のG1競輪祭最終日」まで。つまり、競輪祭が終了した時点でグランプリ出場選手が事実上決定する流れです。
出場選手は開催時S級在籍が絶対条件。選考期間終了後、正選手9人と補欠選手1人が発表されます。
主な選考基準は以下の通り。
- 選考期間におけるG1優勝者(全日本選抜・日本選手権・オールスター・寛仁親王牌・競輪祭)
- 世界選手権自転車競技大会ケイリン金メダル獲得者(選考時S級S班またはS級1班在籍選手に限る)
- 選考期間における獲得賞金上位者
なお、KEIRINグランプリには「選考除外基準」というのもあります。以下に1つでも該当した選手はG1を勝っていても出場できません。
- 選考時に出場斡旋保留の措置を受けている者
- 開催月に出場斡旋停止等の措置を受けている者
- 選考期間における出走回数が40回未満の者(ナショナルチーム所属などやむを得ない理由がる場合を除く)
- 選考期間内のG1・G2における失格回数が3回以上となった者
上記の選考基準・選考除外基準をクリアした選手だけに出場権が与えられます。
GP優勝賞金と2着以下の賞金
着順 | 賞金(副賞含む) |
---|---|
1着 | 1億4000万円 |
2着 | 2810万円 |
3着 | 1720万円 |
4着 | 1178万円 |
5着 | 977万円 |
6着 | 910万円 |
7着 | 880万円 |
8着 | 861万円 |
9着 | 850万円 |
棄権 | 9着賞金の80% |
失格 | 0円 |
KEIRINグランプリの優勝賞金、2着以下の賞金は表の通り(2024年・副賞含む)。9着でも完走さえすれば850万円を獲得できます。
優勝賞金は年々上場傾向
着順 | 賞金(副賞含む) |
---|---|
2019年 | 1億340万円 |
2020年 | 1億340万円 |
2021年 | 1億830万円 |
2022年 | 1億2380万円 |
2023年 | 1億3700万円 |
2024年 | 1億4000万円 |
世界中にパンデミックを巻き起こした新型コロナウイルス。当時、世界経済は停滞に陥ったものの、在宅率増加によって公営競技(競馬・競輪・競艇・オートレース)の業績は急上昇。
その影響もあって、グランプリの優勝賞金はわずか数年で4000万円ちかく増額されています。
今後どうなっていくかは未知数ですが、このまま売上好調を推移すれば2億円に到達する日がくるかもしれません。
競輪の賞金については以下の記事が参考になるぞ!
グランプリの開催場一覧
2024:静岡
2023:立川
2022:平塚
2021:静岡
2020:平塚
2019:立川
2018:静岡
2017:立川
2016:平塚
2015:京王閣
2014:岸和田
2013:立川
2012:京王閣
2011:平塚
2010:立川
2009:京王閣
2008:平塚
2007:立川
2006:京王閣
2005:平塚
2004:立川
2003:京王閣
2002:立川
2001:平塚
2000:立川
1999:立川
1998:立川
1997:立川
1996:立川
1995:立川
1994:立川
1993:立川
1992:平塚
1991:立川
1990:立川
1989:中止
1988:立川
1987:平塚
1986:立川
1985:立川
KEIRINグランプリの開催場は“原則持ち回り”です。
とはいえ、大勢の観客を収容できるキャパシティやセキュリティ面など求められる条件は高く、これまで開催実績のある競輪場はそれほど多くありません。
2024年までの累計では、第1回開催場でもある「立川」が21回でトップ。次いで平塚が9回、京王閣が5回、静岡が3回、西日本で唯一2014年に開始した岸和田が1回。
レースはいつ開催される?
2025年現在、KEIRINグランプリの開催日は毎年「12月30日」で固定されています。また、グランプリはS級普通開催「寺内大吉記念杯」の最終日最終レースとして行われるのが慣例です。
初日のメインは「ヤンググランプリ」、2日目のメインは「ガールズグランプリ」。年末は3日続けて各カテゴリの頂点を決めるレースが行われるプログラムとなっています。
KEIRINグランプリの独自ルール
KEIRINグランプリには他のレースと違ったルールや仕組みがいくつもあります。
その年を代表する選手がぶつかり合う一戦であるうえ、すべての競輪ファンが最大級にぶち込む大一番。特別感を感じるものばかりです。
予選なしの一発勝負で決着
KEIRINグランプリ最大の特徴は、選ばれた9人の選手たちが「一発勝負」争うこと。
他の公営競技では、競艇(SGグランプリ)は18人、オートレース(SGスーパースター王座決定戦)は16人が予選から競い合います。
対して競輪は、最初から出場者が9人に絞られ、たった1回のレースで1億円超の賞金を奪い合う大会方式。この仕組みは第1回から変わっていません。
当初は東西で予選を行う案もあったといいますが、「有馬記念のように一発で決めた方が盛り上がる」という声が多くを占めたことから現行ルールを採用。
緊張感のあるレースで車券も売れたことで、現在まで定着することになったのです。
車番と並びは前もって公表される
KEIRINグランプリの車番は、本番の約2週間前に開かれる共同記者会見の場で公表されます。
車番の決定方法は年によって異なりますが、2024年は選手自身が選ぶ形式となり、選考順位1位の選手から順番に数字を選択していきました。
並び(ライン)については会見の場で選手自身がコメント。順当な並びなら問題ありませんが、注目したいのは単騎選手が多い年や、特定の地区に選手が偏った時など。
全員が最強レーサーという戦いで「どの選手がどの位置で戦うのか」は、予想を組み立てる上で欠かせない情報となります。
優勝回数の多い車番で予想する人いるけど、選手自身で選ぶ場合は参考にしちゃダメだぞ
出場選手は全員「来年のS級S班」
KEIRINグランプリを走る選手は、出場が決まった時点で翌年のランクは「S級S班」となります。期間はグランプリ直前の12月27日~翌年12月26日まで。
S級S班は全員が特別デザインのユニフォームと“赤パン”と呼ばれるSS限定のレーサーパンツでレースに出走。
また、グランプリを勝った選手は翌1年間、1番車固定のチャンピオンユニフォームで走ることができます。
KEIRINグランプリの歴代優勝者や売上推移
これまで誰が年末の大一番を制してきたのか?気になる出目や配当データとあわせて、KEIRINグランプリの過去を振り返ります。
グランプリの歴代優勝者
年 | 開催場 | 優勝者 |
---|---|---|
2024年 | 静岡 | 古性優作(大阪) |
2023年 | 立川 | 松浦悠士(広島) |
2022年 | 平塚 | 脇本雄太(福井) |
2021年 | 静岡 | 古性優作(大阪) |
2020年 | 平塚 | 和田健太郎(千葉) |
2019年 | 立川 | 佐藤慎太郎(福島) |
2018年 | 静岡 | 三谷竜生(奈良) |
2017年 | 平塚 | 浅井康太(三重) |
2016年 | 立川 | 村上義弘(京都) |
2015年 | 京王閣 | 浅井康太(三重) |
2014年 | 岸和田 | 武田豊樹(茨城) |
2013年 | 立川 | 金子貴志(愛知) |
2012年 | 京王閣 | 村上義弘(京都) |
2011年 | 平塚 | 山口幸二(岐阜) |
2010年 | 立川 | 村上博幸(京都) |
2010年以降のKEIRINグランプリ歴代優勝者。
第1回から遡ると、大会連覇を達成したのは山田裕仁(2002~03)のみです。それだけ連続で1着になるのが難しいということでしょう。
近年はグランプリ優勝選手がそのまま賞金王に輝いている
グランプリ単体の売上推移
年 | 売上(前年比) |
---|---|
2024年 | 64億3148万円(101.9%) |
2023年 | 63億1139万円(101.1%) |
2022年 | 62億4560万円(100.1%) |
2021年 | 62億4182万円(110.1%) |
2020年 | 56億7148万円(108.7%) |
2019年 | 52億1579万円(100.2%) |
2018年 | 52億674万円(102.9%) |
2017年 | 50億6186万円(104.1%) |
2016年 | 48億6384万円(92.8%) |
2015年 | 52億4240万円(96.0%) |
2014年 | 54億6018万円(99.1%) |
2013年 | 55億942万円(108.6%) |
2012年 | 50億7515万円(98.6%) |
2011年 | 51億4546万円(104.9%) |
2010年 | 49億674万円 |
KEIRINグランプリの売上推移(2010年以降)は上記の通り。
新型コロナで在宅率が増加し、ネット投票の定着などもあって2020年頃から右肩上がりに伸ばしています。
ただ、全盛期だった時の売上には遠く及ばず。はたして、1996年に記録したグランプリ最高売上「106億4770万円」を超える日は訪れるのか?
単発のレースで見れば、ボートレースのグランプリ優勝戦より多い売上だ
3連単の出目と配当一覧
年 | 出目 | 2連単 | 3連単 |
---|---|---|---|
2024 | 169 | 3,470円 | 19,300円 |
2023 | 354 | 5,210円 | 21,370円 |
2022 | 912 | 1,260円 | 4,760円 |
2021 | 432 | 2,380円 | 10,520円 |
2020 | 429 | 20,020円 | 221,650円 |
2019 | 438 | 19,190円 | 143,920円 |
2018 | 124 | 3,560円 | 21,440円 |
2017 | 981 | 5,450円 | 28,230円 |
2016 | 368 | 5,670円 | 41,560円 |
2015 | 628 | 2,920円 | 7,720円 |
2014 | 251 | 2,890円 | 19,280円 |
2013 | 368 | 1,940円 | 23,930円 |
2012 | 438 | 14,190円 | 84,800円 |
2011 | 257 | 17,770円 | 62,150円 |
2010 | 739 | 6,550円 | 35,710円 |
2009 | 984 | 2,550円 | 11,550円 |
2008 | 719 | 6,840円 | 39,690円 |
2007 | 315 | 3,520円 | 37,470円 |
2006 | 569 | 13,470円 | 63,340円 |
2005 | 459 | 10,840円 | 145,740円 |
2004 | 985 | 4,760円 | 32,940円 |
2003 | 639 | 3,760円 | 37,070円 |
2002 | 971 | 1,330円 | 6,050円 |
2001 | 528 | 6,400円 | 85,040円 |
2001年以降の3連単出目と配当(2連単・3連単)は上記の通り。
KEIRINグランプリは”1着とそれ以外の賞金差”が大きすぎるレース。ラインが存在するとはいえ、どの選手も優勝しか見ていないはずです。
そうした心理状態で激しい戦いが繰り広げられるため、ライン決着が非常に少ない印象。
実際に起きた事件やハプニング
KEIRINグランプリで起こったまさかのハプニング、そして目を疑うようなトラブルの事例をいくつか紹介します。
労使交渉により開催中止
第5回大会として開催予定だった「KEIRINグランプリ1989」。
選手会側が求めていた賞金増額を主催者側が受け入れなかったことで交渉が決裂。グランプリを含む立川年末開催のストライキを予告しましたが、話し合いに進展は見られず。
そのまま交渉がまとまることなく、前代未聞のグランプリ中止が決定してしまったのです。
開催されるはずだったレースには、連覇を目指す井上茂徳をはじめ、中野浩一・滝澤正光などレジェンドが多数。
さらに、この年のグランプリが唯一の出場機会だった波潟和男・郡山久二・小川博美・工正信にとって、悔やんでも悔やみきれない悲しい結末に。
主催者は数十億円の収益を失い、選手は高額賞金を失った事件。どっちも損してるし…
過度な牽制による2回の再発走
1990年代の競輪は前を取りたがらない選手が多く、なかなかスタートを切ろうとしない「出渋り」が非常に多かった時代。
1990年の第6回大会では、2回の再発走が行われる異例のハプニングが起こりました。
号砲が鳴った後、誰も発走機から離れず互いを牽制。観客からは怒号が飛び交うが動きはなく、30秒以上経って号砲とジャンが鳴って再発走。
号砲後、③中野浩一だけが発走機を離れる。しかし、前には進まずその場でスタンディングを続けて様子見。同じ九州ラインの⑦井上茂徳も発進したことで2人が誘導員を追っていくが、他の7人は牽制をやめずまたも再発走。
ようやく3回目の発走で成立したものの、この事件は過度なスタート牽制を禁止するルール改正(規定時間を超えたら賞金半額のペナルティ)のきっかけと言われています。
大量落車で5選手が棄権および失格
歴代最高売上を記録した1996年のKEIRINグランプリ。
最終周回2センターで小橋正義と神山雄一郎が抜け出した直後、後ろを走っていた選手たちが相次いで落車。年間通して1回あるかないかの多重事故となりました。
その結果、グランプリ最多となる6人が落車となり、小橋と神山がワンツーフィニッシュ。最終的に完走できたのは4人のみ。
- 1着:小橋正義
- 2着:神山雄一郎
- 3着:後閑信一
- 4着:吉岡稔真
- 棄権:児玉広志
- 棄権:海田和裕
- 棄権:十文字貴信
- 棄権:三宅伸
- 失格:松本整
補足しておくと、ゴールまで30メートル以内に落車した場合、自転車を担いでゴールすれば完走となります。
ただ、30メール以上あったにもかかわらず、松本・海田・十文字・三宅の4人は再乗せず担いだままゴール。その為、完走が認められず棄権となったようです。
レース後に観客が乱入
2011年のKEIRINグランプリ終了後、思わぬ事件が起こってしまいます。
選手がゴールしてクールダウン中、観客の男性2人が金網を乗り越えてバンク内に乱入。そのまま選手を追いかけ、2着に入った武田豊樹に近づこうとしました。
2人は武田ファンを自称する18歳と16歳の少年。すぐ係員に取り押さえられましたが、武田は「刺されるかと思った」と激怒。
平塚競輪の開催責任者は、市のホームページを通じて「ファンの皆様にご迷惑をおかけし、大変申し訳ございませんでした」と謝罪のコメントを発表しています。
まとめ
年末らしい独特の雰囲気で行われるKEIRINグランプリ。高額賞金とグランプリレーサーの称号が懸かった、全競輪選手が目標とするビッグレースです。
出場する9人全員が本命級の実力を持っており、誰が勝ってもおかしくない頂上決戦。よって、展開ひとつで超大穴を獲れるレースとも言えます。
最後に、過去に何度も現地観戦していますが、あなたが思っている以上に熱気ヤバめです(笑)
まだ体験したことがないなら、一度でいいのでぜひ足を運んでみてください!
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